住宅ローンの繰り上げ返済でトクするための鉄則は、「できるだけ早く実行する」ということ。その上で、どのローンから繰り上げ返済するのかの優先順位は以下の通りです。
- 金利の高いローンから実行する
- 残高の多いローンから実行する
- 残存期間の長いローンから実行する
福島さんの場合には、公庫融資と銀行ローンの2本立てです。上記の鉄則からすれば、残存期間は同じですから、金利、残高からみて公庫融資から優先的に繰り上げ返済するのが得策になります。
公庫融資の繰り上げ返済は100万円以上、毎月返済額単位が条件ですから、3年が経過した現在の段階で実行するとすれば、約100万円の繰り上げ返済で残りの返済期間を26回短縮できます。26回分の本来の返済額は9万3002円×26回の約242万円。
約100万円で約242万円の返済がなくなるわけですから、差し引き約142万円の支払い利息をカットできる計算です。まだあまり余裕がないからといって繰り上げ時期を1年ずらすと、カットできる利息は約138万円に減り、2年後なら約131万円に減ってしまいます。
とにかく早く実行するほうが得策ということがこの数字からもお分かりいただけると思います。
ただ、いまの貯金が120万円ほどしかない段階でそれを使い果たししまうのはどんなものでしょうか。現実的には、佳美さん自身が職場に復帰し、安定的に収入が確保できることが確実になってからのほうが無難でしょう。たしかに、1年でも早いほうがトクする金額は多くなりますが、それによるリスクも少なくないと思います。万一ということもありますから、数万円あるいは10万円のトクよりは、いまのところは
家計の安心を優先するほうが現実的だと思います。1年、2年先送りすることでトクする金額は若干減っても、それでも100万円以上はトクできるのですから。
なお、参考まで銀行ローンに繰り上げ返済するとどうなるのかも試算してみました。約102万円の繰り上げ返済で、支払い利息約92万円をカットできる計算です。やはり公庫融資から繰り上げ返済したほうがトクする金額は多くなります。銀行ローンは金利上昇が不安、あるいは残高の少ないほうから早く返済を終えてしまいたいと考えるならあえて銀行ローンから繰り上げ返済していくのも手でしょうが、現状では公庫融資優先でいいと思います。
銀行ローンは、将来金利が急速に上がりそうな情勢になったときに減らすといった考え方でいでしょう。
● 福島さん一家のマイホーム購入資金計画例
3年前に新築一戸建てを購入
価格4270万円、自己資金900万円
資金計画
融資の種類 |
借入額 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額 |
公庫融資 |
2470万円 |
2.85% |
35年返済 |
9万3002円 |
銀行ローン |
900万円 |
2.20% |
35年返済 |
3万0745円 |
合計 |
3370万円 |
-- |
-- |
12万3747円 |
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● 繰り上げ返済の効果比較
繰り上げ返済の方法 |
短縮される回数 |
カットできる利息の額 |
いま約100万円を公庫融資に繰り上げ |
26回 |
約142万円 |
1年後に約104万円を公庫融資に繰り上げ |
26回 |
約138万円 |
2年後に約102万円を公庫融資に繰り上げ |
25回 |
約131万円 |
銀行ローンに約102万円を繰り上げ |
63回 |
約 92万円 |
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