まず、贈与税の問題ですが、
従来の「住宅取得資金贈与の特例」では、住宅資金として贈与を受けた場合には、550万円まで非課税で、1500万円までは低率課税になっています。南川さんの場合、夫婦でそれぞれの親から400万円ずつ貰うのなら、税金はかからないことになります。今回「相続時精算課税制度」が創設されるに際して、この制度は廃止されることになりますが、
2005年末までは経過措置として存続します。ですから、贈与を受けてマイホームを買うときには、当面は新しい制度を利用するか、従来からのこの制度を利用するか選択することができるわけです。
新しく創設された制度は、2500万円の贈与までは贈与時に課税せず、相続が発生したときに精算するという制度です。親の年齢が65歳以上、贈与を受ける子どもが20歳以上などの条件があります。この制度の特例として、
住宅取得資金の場合には非課税枠が3500万円まで拡充され、親が65歳未満であっても贈与できることになっています。この新制度を利用しても、夫婦で400万円ずつそれぞれの親から贈与を受けるのなら、やはり非課税になります。ともに税金はかからないわけですが、
どちらを選択するのかということになれば、従来の制度を利用するのが無難でしょう。相続時精算課税制度を使うと、今後この制度を使おうとすると、すでに400万円の贈与を受けているので、残りの枠は2100万円ということになってしまいます。でも、従来からの住宅取得資金贈与制度を利用しておけば、2500万円の枠がそのまま残ります。
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マンションはお二人の共有名義でないと、それぞれの両親からの相続の非課税特例は受けられません。また、会社員の場合、年収1442万円を超えると同じく非課税特例は受けられません。 |
さて、資金計画のほうですが、気をつけておくべき点は以下の3点といえるでしょう。
- 現在お子さまが5歳と0歳ですから、高校、大学などに進学する10年後、15年後には負担が軽くなるようにしておきたい
- できれば、ご主人の定年までに返済を終えて老後の負担をゼロにしたい
- ただし、共働きなのでリストラなどの影響をこうむる可能性が二人分あるというリスクも考慮しておきたい
以上の点を踏まえて資金計画を考えてみましょう。
中古マンションなので、公庫融資が利用できるかどうかが不明ですが、利用できるとすれば、やはり固定金利型なのでこちらを優先したいところです。専有面積75m2超なら融資枠が500万円加算されますから、借入額1700万円をほぼ公庫だけで調達できる可能性が高いと思います。そうすれば、20年返済で毎月返済額は約9万円、10年返済なら約16万円になります。月16万円でも年間の返済負担率は約13%。20%以上返済している人がいることを考えれば、かなり安全な資金計画といえます。年収を考えれば、その上で十分預貯金ができるはずですから、どんどん繰り上げ返済してさらに期間を短縮していきましょう。
ただ、そうなるとローン控除が使えなくなる点は理解しておいてください。ローン控除は通算10年以上の返済期間が必要なので、繰り上げ返済によってすでに経過した期間と残りの返済期間の合計が10年を切った段階から打ち切りになってしまいます。
なお、公庫融資が利用できないときには銀行ローンを利用します。ここでは通常の変動金利型の金利で計算しておきましたが、実際には銀行によって優遇金利制度を利用できることが多いので、少しでも金利が有利になる銀行を見つけて負担を軽減するようにしてください。
● 南川さん一家のマイホーム購入資金計画例
共通条件
購入価格 |
4500万円 |
自己資金 |
2000万円 |
親からの贈与 |
800万円 |
住宅ローン |
1700万円 |
元利均等返済でボーナス返済なし |
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- 銀行ローン(変動金利型)を20年返済で利用する
- 銀行ローン(変動金利型)を15年返済で利用する
- 銀行ローン(変動金利型)を10年返済で利用する
- 公庫融資を20年返済で利用する
- 公庫融資を15年返済で利用する
- 公庫融資を10年返済で利用する
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● 住宅取得資金贈与の特例だと税金はこうなる
贈与額 |
通常の税額 |
特例の税額 |
300万円 |
21.0万円 |
0.0万円 |
400万円 |
42.5万円 |
0.0万円 |
500万円 |
84.5万円 |
0.0万円 |
600万円 |
101.5万円 |
5.0万円 |
700万円 |
136.5万円 |
15.0万円 |
800万円 |
176.0万円 |
25.0万円 |
900万円 |
216.0万円 |
35.0万円 |
1000万円 |
260.5万円 |
45.0万円 |
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