節約・ライフプラン

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自営業の丼勘定から脱却したいのですが


山根 克規先生
(やまね かつのり)
プロフィール
事業用と個人用の口座を分け、事業主の報酬を決める事から始めましょう

丼勘定から抜け出すためには「ソフト」も一考

貯蓄目的と戦略的な資金活用

将来への備えは、節税効果も考慮して

木元 寿子 さん(仮名)のご相談
夫婦で自営業をしております。(私は税務処理上、夫の店の事務作業請負としての開業届けを出しております)
  1. 私は、夫の経営する店で週休2日で働いており、家計+私の給料として毎月30万を受け取っております。しかし、家計と私の給料が明確に分かれていなく、毎月5万円を銀行引き落としで貯金している以外は、月によって残高が増えたり減ったりを繰り返しているだけです。
  2. 夫は、お店の利益と自分個人(家計で使うお金も含む)の収入が分かれておらず、メインの口座だけで収入支出を行なっており、残高が増えたら貯蓄として他の銀行や信託等にまとめて(300〜500万単位で)お金を移すというやり方をしております。
私・・・普段の食費や日用品・衣料費・冠婚葬祭費を負担、 夫・・・住宅ローン、レジャー費(海外旅行など)、子供の教育費、夫個人の買い物、店の仕事上の買い物などが全て一つの口座から引き落としなので、毎月目的別に分けて貯蓄ができておりません。複数の口座に数百万〜1000万単位で夫の預金があり、現在は私自身何も困っておりませんが、自営業という不安定な職業のためこのままのどんぶり勘定ではまずいのではと思い始めました。私自身の預金もあまりできていないため、何かの時に不安です。どのように、家計を管理していったらよいのか、どうかアドバイスお願いいたします。

木元さん(仮名)のプロフィール

32歳。42歳のご主人と共に自営業を営む。13歳の長男、12歳の長女との4人家族。

事業用と個人用の口座を分け、
事業主の報酬を決める事から始めましょう

家計の内容を拝見させていただきましたが、確かに「どんぶり勘定」という感じですね。
今は事業も順調のようで、その分家計をシビアにチェックしなくても大丈夫なのだと思われます。しかしご相談にもあるように「このままでよいのか」という疑問が出てきたことは、とても素晴らしいと思います。少しずつできる範囲内で改善していけばよいでしょうね。

ではどのようにすればよいか、一緒に考えて見ましょう。

事業用・個人用の口座を分けることから

まず気になるのが、事業をしているのに口座が個人口座と事業用の口座に分かれていないことです。事業所得から推測すると売上は結構な金額になると思われますので、やはり事業用の口座と個人口座を分けることをお勧めいたします。それが公私混同から脱却する第一歩です。早速口座を作ってみましょう。

その上で個人事業の場合にあいまいになる、事業主の報酬を設定しましょう。その報酬は毎月「給料日」を決めて、事業用の口座から個人用の口座に資金移動させてください。そして家計や個人的なお金の収支はそちらの口座で管理しましょう。奥様に支払われる事務委託費も同様に、きっちりとした請求に対して支払い、家計への拠出はそのお金の中からやりくりしましょう。なお、奥様の口座はご面倒であれば個人用口座だけでも良いでしょう。

丼勘定から抜け出すためには「ソフト」も一考

現在表計算ソフトで集計を取られているようですが、できれば専用のソフトを利用して経理をしてみてはいかがでしょうか?単純な収支がわかるのみではなく、事業の状況がつかみやすいと思います。事業に不安定要因はつきものですが、突発的に事業資金がショートするような時以外は、事業用のお金の中で管理されている必要があります。それらを考えて、先程の事業主の報酬がどのくらいが適切なのかもわかります。

貯蓄などの金融資産に関してですが、当たり前のように聞こえるでしょうが、基本は個人の報酬の中から積み立てをする意識が大切です。というのも、現状がそうであるように、自営業者の場合、どうしても事業と個人の区別が難しくなるからです。ぜひしっかりと区分しておきましょう。そして決算(確定申告)をして大きく残ったお金は、まとめて貯蓄などをしましょう。

貯蓄目的と戦略的な資金活用

ところで、事業には財務戦略が求められますので、先を見通して必要な資金は事業用口座に残しておきましょう。そして貯蓄にも「目的」と「戦略」が必要です。何の目的のために貯蓄するのか?そのためにはどの金融商品が良いのか?ということを考えて見ましょう。

目的に関して大きなものでは、

  1. 緊急予備資金として生活費の1年ないし2年分
  2. 大学など大きなお金のかかる教育費
  3. 住宅ローンの繰上げ返済用
  4. 老後資金

などが考えられます。他に旅行など大きなお金がかかる場合はそれらも考えて見ましょう。なお、車の購入資金は事業用資金の中で積み立ててはいかがでしょうか?これらの必要金額を見積もり、優先順位をつけて用意して下さい。すでに貯蓄もおありのようですから、目的に応じて振り分けていきましょう。それら家計として準備するお金とは別に、ご夫婦各々の貯蓄が必要ということであれば、それも計画的に準備してはいかがでしょうか?

1.の緊急予備資金は普段使うことはないのですが、万が一の場合に必要になるので、特に不安定な自営業者の場合は生活費の2年分くらいあったほうが良いでしょう。金融商品としてはいつでも引きおろしができ、変動しない預貯金などが最適です。2.教育費もお子様の年齢から考えると大学入学は約5年後ですので、あまりリスクをとるのはお勧めできません。が、預貯金を中心に多少リスクマネー(債券や株式、投資信託など)で運用することも良いでしょう。3.の住宅ローン繰上げ返済を行なう場合は1年以内に使うお金ですので、預貯金などが中心です。

将来への備えは、節税効果も考慮して

4.老後資金に関しては、所得も大きいので、節税効果も考えて準備してはいかがでしょう。具体的には自営業者の退職金といわれる「小規模企業共済」や、公的年金の上乗せとして「国民年金基金」「確定拠出年金の個人型」です。いずれも掛金が全額「所得控除」となり、所得税を計算する際に所得から差し引くことができ、結果税金が安くなります。税金が安くなるということは、場合によっては国民健康保険が安くなることにも繋がりますから、家計にとっては大変大きな意味があります。まず「小規模企業共済」は退職金のない自営業者のために用意された制度で、自分で掛け金を設定し、一定年齢以降に受け取ることができます。また「国民年金基金」、「確定拠出年金の個人型」はいずれも公的年金の少ない自営業者のための制度で、「小規模企業共済」同様、自分自身で掛金を設定し、一定年齢以降に受け取ることができます。大きな違いは「国民年金基金」は掛金に対して、将来もらえる金額が決まっていますが、「確定拠出年金の個人型」は運用結果によって受け取る金額が違ってくるという点です。運用に関しては加入者が指示できますので、つまり加入者しだいで受け取り金額が違ってくることになります。なおこの2つの制度を合わせた加入上限が決まっていますので、どちらかにその限度額いっぱいに加入すると、もう一方の制度には加入できなくなりますのでご注意下さい。なお奥様も個人事業主なので、ご主人同様これらの制度を活用することができます

お持ちの金融資産から考えれば、既に余裕のある状況だと思います。しかし将来への不安もあるようなら、今はあまり行なっていないようですが、株式などによる資産運用にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?無理に行なう必要はありませんが、必要に応じて少しずつ勉強をしながらチャレンジすると良いのではないでしょうか?しかしあまり熱中しすぎて本業がおろそかにならないようにご注意下さい。

ではまとめますと、

  1. 事業用口座と個人用口座を分けて用意する。
  2. きっちりと経理をして、資金の公私混同は避ける。
  3. .家計への拠出はそれぞれの個人口座を用いてやりくりする。
  4. .貯蓄は目的に応じて準備する。
  5. .必要に応じて投資にチャレンジしてみる。
以上のようになります。
参考にしていただければ幸いです。




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